「肝臓」

大切にしたい沈黙の臓器「肝臓」
 よく【「肝心(腎)要」(かんじんかなめ)】といわれます。この言葉は肝臓と心臓(「腎臓」)からきています。肝臓と心臓又は肝臓と腎臓は、臓器の中でも特に重要なことから、この言葉が生まれたのです。最近は偏った食生活、アルコールの飲みすぎ、ストレス、過労などで肝臓疾患の人が急増しているとされます。肝臓は人体の中で最大の臓器であり、少々の不具合では悲鳴を上げない「沈黙の臓器」ですが、日頃からのケアに心がけたいものです。そこで、肝臓の働きにスポットを当てました。

肝臓は体のコントロールセンター
 肝臓は体の中で一番大きな臓器で、成年男子でおよそ1,500g、成年女子で1,200gくらいあります。肝臓は大小たくさんの血管が走っており、そこを流れる血液と肝臓の細胞とが、さまざまな物質のやり取りをしていますが、それによって体の中に食物として取り入れた物質を、体の役に立つ物質に変えたり、有害な物質を解毒するなどといった重要な働きをしています。
肝臓は沈黙の臓器 @他の臓器に比べて非常にタフ
→感覚が鈍くて黙って重労働に耐えて働く
裏を返せば自覚症状が出た時にはかなり症状が進んでいる
A再生能力に優れる
B代償能力に優れる
→かなりダメージを受けても、残った正常な細胞が余分に働きそれをカバーして、機能を維持しようとする。

肝臓の三大機能 代謝  消化器から吸収された栄養素を体が使いやすい形に変え、体内の必要なところへ供給していきます。
糖質代謝  食品に含まれる糖質はグルコース(ブドウ糖)として吸収され、門脈を通って血液によって肝臓に運ばれます。肝臓ではグルコースををグリコーゲンという貯蔵できる形の糖に変えて、肝臓に蓄えます。グルコースはエネルギー源として体中に血液によって運ばれ、消費されます。この血中のグルコース濃度が血糖値です。血糖値が下がると、肝臓に蓄えられたグリコーゲンが再びグルコースへと変えられ、血液により、体中に運ばれるという仕組みです。このため、肝臓に異常が生じると低血糖になったり、逆に糖尿病のように高血糖になったりします。
タンパク質代謝  食物中のタンパク質は、消化管を通過する間にアミノ酸に分解され、やがて肝臓に送られます。肝臓ではアミノ酸をカラが利用しやすいタンパク質に作り変えます。それを肝臓に貯蔵したり、必要に応じて血液に送り込み、体中に行き渡らせます。要らなくなったアミノ酸はアンモニアに分解されます。アンモニアは有害ですが、肝細胞で尿素と言う排泄されやすいものに変えられて、尿として排出されます
脂質代謝 食べ物として体の中に入ってきた脂肪は、腸管で吸収され、門脈を通って肝臓へと運ばれます。ここで体が利用しやすいコレステロールやリン脂質などいろいろな脂質に合成されます。さらに余った脂質は肝細胞で作られたタンパク質と結合してリボタンパクという形で血液の中に流れ込み、皮下などに蓄えられます。
解毒 肝臓は有害な物質を毒のない形に変える大切な働きをしています。これを「解毒」と言います。消化管から入ってくる物質の中にはアルコールや薬物など体にとって有害な物質も混ざっています。体は肝臓で毒を取り除いてから、きれいな血液だけを全身に送り出す仕組みになっています。肝臓が弱っているときにお酒が弱くなるのはこのためです。
胆汁生成 と 分泌 肝臓では胆汁を生成する働きもあります。
胆汁は
@腸での消化機能を高める
A肝臓からいらなくなった部っひつを丁へ送り出し、さらに対外へ排出する
という大きな2つの働きがあります。胆汁の主成分である胆汁酸はコレステロールを酸化してつくられ、脂肪を乳化して脂肪分解酵素を働きやすくし、脂肪の腸内での吸収を高める働きや脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きがあります。

肝臓病の自覚症状とその特徴
肝臓は「沈黙の臓器」といわれるだけに、初期の段階では、自覚症状が出にくいとされていますが、左記のような自覚症状がいつも現れるような場合は、肝臓から発せられる危険信号とされています。


体の疲れ 体の疲れは肝炎など肝臓の病気に限らず、風邪を引いて熱が出たり、仕事で疲れた、生活習慣が乱れているといった時にも良く見られる症状であり、他の疾病と区別しにくいところがあります。肝臓ダメージを受けていようとも寡黙に働きますので、自覚できる症状が出にくいと言うことも特徴ですこのため、普段から肝臓に負担をかけていると心当たりのある人は、「ちょっと仕事を頑張り過ぎたかな」「カゼかな」とだけ考えずに、いくら静養しても、だるさが続くようなら、医療機関で診察を受けましょう。
黄疸
(おうだん)
肝臓の機能が悪くなったり、胆汁の流れが詰まったりすると、目や皮膚が黄色くなります。黄疸とは、赤血球の中の血色素であるヘモグロビンから作られるビリルビンという色素が皮膚や目の結膜や強膜(目の白目の部分に沈着することです。黄疸が出るのは、肝臓や胆道に重大な病気があることが疑われ、肝臓病以外では、胆石症などの胆道系の病気でも黄疸が出ることがあります。
食欲不振
消化不良
吐気・嘔吐
胆汁の出が悪くなると、食欲不振に陥り、脂っこいものを敬遠するようになります。又吐気や嘔吐は、以遠や胃潰瘍などの胃の疾患、二日酔いなどのときにも見られる症状ですが、肝炎の症状で、食べ物の匂いを嗅いだだけで吐いてしまった、というようなこともあります。
白色便
茶褐色の尿
急性肝炎の黄疸の症状があるときや閉塞性黄疸がある時は、十二指腸へ排出されるはずの胆汁がうまく排出されていないので、便の色が薄くり白っぽくなります。また胆汁成分のビリルビンが大量に尿中に含まれるようになり、尿がビール瓶のような濃い茶褐色になります。
皮膚の痒み 黄疸が出ている時、全身にかゆみを感じることがあります。これは血中に胆汁量が増加して、その成分の胆汁酸が原因となっています。
こむら返し 肝臓はミネラル・ビタミンの代謝にも大きく関与しており、この機能が低下するため、足のふくらはぎがこむら返しを起こしやすくしなることがあります。
その他 性欲減退」、「酒量の減少(お酒が急に弱くなる)」 、「皮膚のシミが増える」、「ガスがたまり、腹部が張る」、 「鼻血や歯茎からに出血が多くなる」、 などがあります。
主な肝臓の病気 ・ウイルス性肝炎(急性肝炎、慢性肝炎)
・アルコール性肝炎
・肝脂肪


日本人の4人に1人は肝臓機能異常